兵庫県震災復興研究センター

阪神・淡路大震災の直後の大混乱の中で、いち早く被災者の暮らしの復旧、被災地の復興を目標として、日本科学者会議兵庫支部と兵庫県労働運動総合研究所が共同で個人補償の実施を中心内容とした「震災復興のための提言」を1月 29日に国と被災自治体に提出しました。そして、この2つの研究機関を母体に1995年4月22日、兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)が設立されました。

神戸市会/都市防災委員会での「借上公営住宅」問題の4回目の陳情に関する口頭陳述並びに各会派の審査・意見決定について(2013年2月22日)

2012年2月22日

神戸市会/都市防災委員会での「借上公営住宅」問題の4回目の陳情に関する口頭陳述並びに各会派の審査・意見決定について

2月21日(木)、神戸市会各会派の審査・意見決定が、下記の通りありました。
同陳情についての結論は、「審査打ち切り」でした。同問題の陳情は、5件提出され、口頭陳述は、2人でした。

 ■都市防災委員会での審査・意見決定:2月21日(木)午前10時〜正午、神戸市会第2委員会室(27階)。
 ■出席者:市会議員・10人(1人欠席)、都市計画総局・35人、市会事務局・3人、傍聴・9人、マスコミ・1人。

各会派の意見決定は、次の通りです(表明順)。

 ●民主党:継続入居は、公平性の観点から問題。神戸市は、きめ細かい住み替え策をとっているから、審査打ち切り。
自民党:神戸市は、専門家の懇談会を実施している。継続入居は、問題。審査打ち切り。
 ●公明党:神戸市は、専門家の意見を聞こうとしている。継続入居は、気持ちはわからないではないが、?公平性の問題、?財政負担の点から問題。審査打ち切り。
 ●日本共産党:採択。
 ●自民党神戸:会派の考え方は、神戸市の考え方と共通している。要援護者に配慮は必要。審査打ち切り。
 ●みんなの党:懇談会の公開を強く要望する。公平性の観点から問題。不採択。
 ●住民投票☆市民力:多くが「公平性」を言うが、世の中に公平なものがあるのか。期限のない一般の市営住宅と比べて不公平になっているではないか。採択。
  ※新社会党は、会派・2人ゆえ、委員が不在。

本陳情に先立って、神戸市住宅供給公社の解散の議案が審議されましたが、同公社解散に伴う市民負担額が、257億円に上ることが明らかになりました。各会派の追及は、ほとんどなく、都市計画総局長は、「深く反省している」と答弁していましたが、そのような一言で済む問題ではないと思いました。


さて、今回の「借上公営住宅」問題の陳情では、次の5項目の要求を提出しました。
 ◆「陳情書」:

https://drive.google.com/file/d/1YqETWwQ4xbjPeseI2RLhpX5T7L1G8c0i/view?usp=sharing

【陳情事項】

 1.希望するすべての「借上公営住宅」の入居者の居住を継続すること。
 2.これまでに住み替えがなされた307世帯と、今後も住み替えがなされる場合その世帯の生活環境の変化の有無などの追跡調査を実施すること。
 3.神戸市の3805戸(当初の管理戸数)の「借上公営住宅」につき、直接建設方式の場合と「借り上げ」の場合の費用の試算を明らかにすること。
 4.すでにスタートしている「第三者による懇談会」では、神戸市すまい審議会が2006年7月25日に開催ことのある“公募型ヒアリング”を開催し、?入居者、?民間オーナー、?支援者など一般市民の意見が直接表明できるようにすること。
5.「第三者による懇談会」に関する情報は、既実施の会議分を含めその都度すべて公開すること。

審査では、これまで以上の5会派(住民投票、みんな、自民党神戸、共産、公明)が1時間余り審議。会派の方からは、?追跡調査のこと、?試算のこと、?懇談会の公開のことなどが繰り返し質疑され、都市計画総局長と都市計画部長のそれぞれから、問題と思われるものと今後の足がかりになる答弁が入り混じってなされました。主な内容は、次の通りです。

?追跡調査は直ちにはしないが、福祉保健局と連携して地域の安心すこやかセンターを通して“切れ目のない援助”を行う。
?試算は、できなくはないが、試算する意義を感じない。
?懇談会は、すでに2回開催したが、できるだけ速やかにしたい。
?宝塚市は30戸、伊丹市は42戸で少ないから、継続できる。それぞれの自治体は、置かれている状況が違う。
?施策というのは、いつかは終わらなければならない。
?1月15日の市長定例会見の内容は、レクチャーしたものではなく、市長自身の考え方が述べられたもの。

「借上公営住宅」問題に取り組み始めて2年9か月経ちます。
手を緩めることなく、引き続き3・4〜6“請願行動”&“交流相談会”を行います。
2012年7月の「要請署名」提出、10月の「請願書」提出に続き、3回目の“請願行動”&“交流・相談会”です。その案内チラシを神戸市内の「借上公営住宅」の各戸に配布(5000枚余)をしている最中です。
県営住宅や市営住宅にお住まいの方、そして、支援者のみなさま方に声をかけてこぞってご参加下さい。

■と き:2013年3月4日(月)、5日(火)、6日(水)の毎日午前10時〜午後5時
  ■ところ:神戸市役所1号館前のテント
  ■内 容:神戸市長宛の「請願書」提出、入居者・支援者の交流・相談会など。
  ◆「3・4〜6“請願行動”&“交流相談会”の案内チラシ」:
   

https://drive.google.com/file/d/15-9YCi0MRac8U6wLqe6dcZfr3xp7Qxz3/view?usp=sharing


2013年2月21日
神戸市会/都市防災での口頭陳述
「希望するすべての『借上公営住宅』入居者の居住継続を求める陳情書」について

 神戸市中央区中町通3−1−16−201、兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)の出口俊一です。私は、2010年5月以来、「借上公営住宅」の機械的住み替え策の問題点を指摘するとともに、過去3回「陳情書」を提出するなどして同政策の転換を求めて参りました。3点に絞って、申し上げます。

 

1.すべての入居者の居住の権利を保障することを「大原則」「基本方針」に

 まず最初に、神戸市は1月10日、「借上公営住宅」の問題につき「移転が難しい障害者や要介護度の高い入居者らについて、専門家ら第三者による懇談会を設け、対応を検討する」という方針を発表しました。これまで、「返還の契約を守るべきだ」「20年で住み替えをしていただく」ということのみを繰り返し、すでに307世帯の住み替えがなされたことを考えると、一歩前進したと言えます。
 しかし依然として、矢田立郎市長と神戸市の幹部は「期限通りに返還する大原則に変わりはない」「移転を求める基本方針は変わらない」と表明していますが、これらの主張は、?法制度上、?契約上、?財政上、?信義則上、?入居者や民間家主の意向、?人道上、何れの角度からみても「期限通りに返還する大原則」とか「移転を求める基本方針」は根拠を失っています。
 障害者、要介護度の高い入居者はもちろんこと、健康な入居者も含めすべての入居者の居住の権利を保障することを「大原則」「基本方針」にしなければなりません。
 障害、要介護度などで線引きすることは、入居者間に新たな差別を持ち込むことにもなりかねず、このような方向は、直ちに是正されなければなりません。
 そして、これまでの住み替えがなされた307世帯と、今後も住み替えがなされる場合その世帯の生活環境の変化の有無などの追跡調査を実施することが求められています。

2.直接建設方式より安く済んでいる「借り上げ」方式

 次に、1月15日、矢田市長の定例会見が開かれ、市長は「借上げ復興住宅の対応について」その認識や見解を表明しました。しかし、首を傾げざるを得ない内容のオンパレードで、「びっくり」するような発言の連発です。公営住宅法に基づく制度と復興施策についての無理解など、とりわけ、財政上の問題については不正確な数字を述べています。
 「24億円というものは一体だれが持っているかということをくどいようですけども申し上げます。市民の税金です。
 それを20年間、ずっと持ち続けていくということと同時に、さらに空き家になった場合でも、その空いた分の家賃の保証は借りた側にあるわけです。これ全部払っているわけです」とか、「いびつな形が起こっている。これもいわば神戸の震災に関するひとつの特別な意味合いを持ったものではないかと私は思っています・・・」と。
 これは、「24億円」ではなく、「14億〜15億円」です。
 矢田市長と神戸市当局は、「導入した目的と現状の乖離」「財政負担」「公平性確保」の観点から、「借上公営住宅」については、契約に従って、順次返還していくことを基本にしていますが、「借上公営住宅」は公営住宅法に基づく制度と復興施策として実施されてきたものですから、財政支出をしなければならないものです。その基本を脇に置いて論ずることは、行政の仕事・責務を放棄することにつながることになります。
 矢田市長によれば、多額の税金投入になっており、「びっくり」するような状態であるとの認識ですが、そもそも 
 直接建設方式よりは「借り上げ」方式の方が財政負担が少なくて済むということで導入されたわけですから、直接建設方式と「借り上げ」方式の場合の費用の試算を明らかにすることが緊急に求められています。2010年秋、神戸市住宅整備課に?直接建設方式の場合と?「借り上げ」方式の試算の一覧表を求めましたが、いまだにデータは明らかにされていません。
 神戸市当局が「財政負担」「公平性確保」などと言うことを繰り返すのなら、直ちに正確でかつ具体的なデータを明らかにしなければなりません。

3.情報公開の流れに逆行する非公開の私的懇談会

 最後に、すでにスタートしている私的な「第三者による懇談会」について神戸市は、「率直な意見を交換していただく場としており、これを公開することにより、委員に対するさまざまな働きかけが予想され、その結果、率直な意見の交換が損なわれるおそれがあると考えており、非公開としています」(平成25年2月5日付)と「回答」してきました。これは、神戸市情報公開条例10条4号を誤って援用しています。
 今回、「第2次マネージメント計画」を審議した神戸市すまい審議会に差し戻すのではなく、恣意的ともとれる私的懇談会を設け、参加する5人の委員にも報償費を支払うとのことですが、情報公開の流れに逆行するような今回の私的懇談会は市政運営上、問題を残します。そして、何よりも市民の様々な意見表明を敵視するようでは、正確な政策判断ができずに終わる危険性を孕んでいます。
 そこで、今からでも遅くはありません。すでにスタートしている「第三者による懇談会」では、神戸市すまい審議会が2006年7月25日に開催したことのある“公募型ヒアリング”を開催し、?入居者、?民間オーナー、?支援者など一般市民の意見が直接表明できるようにすることや、「第三者による懇談会」に関する情報は、既実施の会議分を含めその都度すべて公開することが必要です。

 以上で、口頭陳述を終わります。

「借上公営住宅」問題/神戸市会での口頭陳述2013年2月21日.doc(Word:36KB)