兵庫県震災復興研究センター

阪神・淡路大震災の直後の大混乱の中で、いち早く被災者の暮らしの復旧、被災地の復興を目標として、日本科学者会議兵庫支部と兵庫県労働運動総合研究所が共同で個人補償の実施を中心内容とした「震災復興のための提言」を1月 29日に国と被災自治体に提出しました。そして、この2つの研究機関を母体に1995年4月22日、兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)が設立されました。

6・6震災研究センター災害復興講演会の開催並びに第8回総会にて“大震災15年検証”に取り組む方針を確認しました。

6・6震災研究センター災害復興講演会の開催並びに第8回総会にて“大震災15年検証”に取り組む方針を確認しました。

1.6月6日(土)午後、神戸市産業振興センターにて“災害復興講演会”を開きました。本年1月に出版しました
 『世界と日本の災害復興ガイド』の執筆者のみなさん方にご講演いただきました。同書の普及の意義や全国各地に出向いて“出前セミナー”開催などに取り組んではどうか、などの提案もなされました。参加者は22人。
 テーマと講演者は、以下の通りです。

●温暖化・気候変動と自然災害
 西川 榮一氏(神戸商船大学名誉教授)
●住宅の耐震改修をどのようにすすめるか
 塩崎 賢明氏(神戸大学大学院工学研究科教授)
●急がれる小・中学校の耐震化
 黒田 達雄氏(一級建築士
●復興と要援護者への支援
 金持 伸子氏(日本福祉大学名誉教授)
●地域防災計画と「国民保護計画」
 増田 紘氏(兵庫県自治体問題研究所事務局長)

※「毎日新聞」(2009年6月7日付)の記事を紹介します。
 http://mainichi.jp/area/hyogo/news/20090607ddlk28040213000c.html

2.6月6日(土)午後、“災害復興講演会”に先立ち同所にて震災研究センター第8回総会を開き、「大震災15年の検証に取り組む」ことなどを確認しました。以下、『第8回総会議案書』の一部を抜粋して、紹介します。

1.阪神・淡路大震災から14年6か月〔問題意識〕

 阪神・淡路大震災(大震災)から14年6か月が経ちました。仮設住宅解消までの5年間、被災者の孤独死は233人にのぼり、いままた、復興公営住宅入居開始から9年、孤独死はすでに568人、合わせて801人を数えています。さらに、復興公営住宅での家賃滞納を理由に強制退去させられる事例が急増、2009年4月からはこの事態に追い打ちをかけるような神戸市営住宅の家賃減免改悪が実施されています。
 また、数年来の構造改革路線と世界金融危機が複合的に中小零細商工業者や「自力再建被災者」を襲い、震災借入金や二重ローンなどが重くのしかかっています。被災者救済の課題は、14年もの月日が経過したにもかかわらず解消するどころか深刻になっていると言わざるを得ません。
 またこの14年間、10を超える豪雨、台風、豪雪、地震が日本列島を襲い、被災者はそれらの自然災害からの復興に苦闘しています。
 大震災から3年余り経った1998年5月に成立した被災者生活再建支援法は、その後2回改正され、ようやく住宅再建に直接的な支援が行われるようになりました。その効果は能登半島地震の輪島や中越沖地震の柏崎で如実に現れ、ようやく「復興」が施策の対象として扱われるようになってきました。
 しかし、実際には最低限の支援金が支給されるようになった程度であり、災害のその日から被災者がどのように立ち上がっていけばよいのか、住宅の確保にはどのような道筋があるのかといった選択肢をきちんと示すことができていません。
 災害多発時代の日本に生きている以上、「復興」の備えを整備・確立する課題は国民的課題にしていかなければなりません。14年で“風化”などしているいとまはありません。こんな気持ちを込めて2009年1月17日、兵庫県震災復興研究センターでは『世界と日本の災害復興ガイド』(クリエイツかもがわ)を出版しました。
 あと半年で大震災から15年。この間の研究の蓄積を基に大震災15年の総括・検証をすることが求められていいます。

2.研究テーマの設定について

(1)阪神・淡路大震災(大震災)の被災地はもとより、日本と世界の自然災害被災地の現状・課題に即して研究テーマを設定し、研究をすすめます。

(2)考えられる研究テーマは、次の通りです。
[1]大震災15年目の被災者救済に関する諸課題
・災害援護資金をはじめとする借入金返済問題
・中小商工業者の借入金返済問題
・二重ローン問題
・新長田駅南地区の復興再開発問題
・復興公営住宅の家賃値上げや家賃滞納・強制退去問題
孤独死を防ぐ問題
・「復興基金」事業終了後の被災者支援策の問題
・特別優良賃貸(特優賃)住宅の家賃値下げ問題
   ・民間賃貸住宅の家賃補助問題
・被災マンションの再建問題
[2]災害復興制度―災害復興法制の整備―の確立をめざす課題
[3]被災者生活再建支援法の3回目の改正課題(2011年)
[4]耐震改修問題
[5]ボランティア・NPO問題
[6]国際人権規約社会権規約自由権規約)を活用する課題
[7]開発・埋立・防災問題
[8]開発主義神戸の象徴としての神戸空港の跡地問題
[9]神戸製鋼石炭火力発電所問題
[10]神戸港を含む神戸経済の再生の課題
[11]大震災の教訓を伝え・広める課題

3.大震災15年の検証作業並びに『世界と日本の災害復興ガイド』などの成果を発信・普及する取り組み

(1)大震災15年の検証作業に取り組みます。この14年の研究活動の成果を生かすことを基本に、[1]政策提言、[2]出版、[3]シンポジウム開催などを常任理事会において具体化します。

(2)2009年1月に出版した『世界と日本の災害復興ガイド』や従来の『災害復興ガイド』『大震災100の教訓』『大震災10年と災害列島』『大震災100の教訓―英語版』『災害復興とそのミッション』を、引き続き国内外に発信・普及します。

4.研究会・講演会・シンポジウム・セミナーやフィールドワークの開催

(1)上記1.2.3.の問題意識に基づき、講演会・研究会・シンポジウム・セミナー&フィールドワークの開催を計画します。

第3回「災害復興連続セミナー&フィールドワーク」の開催
●目的:
◎「災害列島日本」での今後の災害への備えのため、復興まちづくりの成功例や失敗例などを、改めて検証し、発信する.
◎また、阪神・淡路大震災の教訓を発信していく契機として、『災害復興ガイド』(07年1月)・『世界と日本の災害復興ガイド』(09年1月)の普及を図る.
●期間:2009年8月頃からスタートして、1年間で4〜5回開催.

セミナー》
●内容:『世界と日本の災害復興ガイド』を中心に執筆者が、順次報告・討論.
●会場:神戸市内.

《フィールドワーク》
●目的地案
 目的地は、区画整理地区(18地区)、再開発地区(6地区)などの中から成功例や失敗例などを抽出します。◆は既訪問地区.
◆新長田南再開発◆西宮北口地区・再開発+区画整理◆新長田北区画整理細田、水笠)
◆須磨・千歳地区◆芦屋・若宮◆芦屋・川西地区◆東灘・森南地区◆淡路・富島地区
◆尼崎・築地地区
 ◇西須磨◇兵庫・上沢地区→松本地区◇長田・御蔵地区◆再/新長田駅南地区再開発◇西宮・森具地区など.


※参考
・震災研究センター第8回総会議案書
 

https://drive.google.com/file/d/15iQOY-ZFoevtnbTgKCtzrwX7tyhknXaW/view?usp=sharing


・『世界と日本の災害復興ガイド』(09年1月)案内チラシ
 

https://drive.google.com/file/d/1IMd-or8o-aVZjBuDgK_5U_eqGzS-l_1Q/view?usp=sharing