兵庫県震災復興研究センター

阪神・淡路大震災の直後の大混乱の中で、いち早く被災者の暮らしの復旧、被災地の復興を目標として、日本科学者会議兵庫支部と兵庫県労働運動総合研究所が共同で個人補償の実施を中心内容とした「震災復興のための提言」を1月 29日に国と被災自治体に提出しました。そして、この2つの研究機関を母体に1995年4月22日、兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)が設立されました。

6月24)午後、 久元喜造神戸市長宛の「借上公営住宅」問題に関する要請書を提出し、発表致しました。

「借上公営住宅」問題に関する要請書(全文)(PDF:264KB) 2015年6月24日
神戸市長 久元喜造
                         兵庫県震災復興研究センター
                            事務局長 出口 俊一

「借上公営住宅」問題に関する要請書

 冠省。日頃の神戸市政の推進に感謝申し上げます。
 さて、「借上公営住宅」問題は、法制度上、信義則上、復興政策上、財政上、人権、人道、実態など様々な角度から検討しなければならないと考え、本問題が表面化して以来この5年間、兵庫県震災復興研究センターは、調査・研究と実践を重ね、神戸市会宛の「陳情書」提出や書籍(『大震災20年と復興災害』など)・資料にまとめて参りました。
 そこで、「借上公営住宅」問題に関しまして、下記の通り要請致します。

−記−

1. 平成27年6月4日付にて久元喜造神戸市長名の「借上げに係る市営住宅の期間満了に伴う明渡しについて(通知)」という文書が、神戸市営キャナルタウンウェスト住宅1号棟〜3号棟の8世帯の入居者に内容証明郵便にて送付されました。

 同通知では、神戸市の権限の根拠や義務が明記されている「?公営住宅法32条第5項及び神戸市営住宅条例第50条第12項、?同法第32条第6項及び同条例第50条第13項、?借地借家法第34条第1項」に基づいて明渡しの事前通知がなされています。

 借上げ住宅に関する今回のような明渡し請求は、入居時の手続きが公営住宅法に基づいて履行され ている場合に根拠が発生するのですが、入居にあたって「事業主体の長は、借上げに係る公営住宅の入居者を決定したときは、当該入居者に対し、当該公営住宅の借上げの期間の満了時に当該公営住宅を明け渡さなければならない旨を通知しなければない」(公営住宅法第25条第2項)にもかかわらず、この「通知」はなされませんでした。
 また、「既存民間住宅を活用した借上公営住宅の供給の促進に関するガイドライン(案)」(平成21年5月、国土交通省住宅局住宅総合整備課)においても「入居者への決定に当たっては、公営住宅法第25条第2項の規定に基づき、当該入居者に対し、当該公営住宅の借上げ期間の満了時に当該公営住宅を明け渡さなければならない旨を通知しなければならない。通知に当たっては、借上期間の具体的な満了時期及び借上期間満了時に当該公営住宅を明け渡さなければならないことの2つの事項を含む必要がある」と明記されています。

 入居にあたってのこの「期間の満了時に・・・明け渡さなければならない旨の通知」がなされなかったということは、「事業主体の長」の義務の不履行ゆえ手続き的瑕疵があり、そもそも「借上げ住宅」ではなかったと言うこともできます。

 今回の20年期限の強制的退去の根拠は、公営住宅法第1条から第54条の条文のどこを探しても見当たりません。神戸市が20年期限の強制的退去の政策を打ち出したのは、平成22年6月に策定した「第2次マネジメント計画」でした。神戸市の政策変更により、現在のような入居者の居住の権利を奪うような事態が惹起されています。
 そもそも公営住宅法の目的は、「国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与すること」(同法第1条)であって、強制的退去を根拠づける内容にはなっていません。

 この点につき、久元市長のご見解をお尋ね致します。

2. 本問題につき、久元市長と公開の面談の場で、意見交換をさせていただきたいと考えております。大変お忙しいとは存じますが、よろしくお取り計らいをいただきますようお願い申し上げます。

以上


【連絡先】
兵庫県震災復興研究センター
653-0041
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FAX:078(691)5985
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