兵庫県震災復興研究センター

阪神・淡路大震災の直後の大混乱の中で、いち早く被災者の暮らしの復旧、被災地の復興を目標として、日本科学者会議兵庫支部と兵庫県労働運動総合研究所が共同で個人補償の実施を中心内容とした「震災復興のための提言」を1月 29日に国と被災自治体に提出しました。そして、この2つの研究機関を母体に1995年4月22日、兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)が設立されました。

本日(3月6日)、「借上公営住宅」問題の陳情に基づき神戸市会/予算特別委員会にて口頭陳述を行いました。

2012年3月6日
兵庫県震災復興研究センターの出口俊一です。

本日、「借上公営住宅」問題の陳情(2月22日提出)に基づき、神戸市会/予算特別委員会にて口頭陳述(5分間)を行いました。全文は、下記をご覧下さい。

「借上公営住宅」問題での3回目の今回の陳情は、地方自治法第109条に基づく「公聴会」開催を要求しています。
公聴会」開催要求は、神戸市会では40年振りのことで、「公聴会」について神戸市会では過去、5回開催され、直近の開催は、1972年(昭和47年)交通問題で開かれたとのことです。


今後の日程は、下記の通りです。

               −記−

1.各会派意見表明:3月16日(金)午前11時〜、神戸市会委員会室(26階ないし27階)。
2.各会派意見決定:3月19日(月)午前11時〜、神戸市会委員会室(26階ないし27階)。

お問い合わせは、兵庫県震災復興研究センターまで。


2012年3月6日
神戸市会/予算特別委員会・第3分科会での口頭陳述

「『借上公営住宅』の住み替え策に関して、地方自治法第109条に基づき『公聴会』を開き、入居者・支援者・学識経験者等から意見を聴くことを求める陳情書」について


神戸市中央区中町通3−1−16−201、兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)の出口俊一です。私は、2010年5月以来、「借上公営住宅」の機械的住み替え策の問題点を指摘するとともに、同政策の転換を求めて参りました。

 

1.「住み替え」策、つまり追い出し策の大本は何か−政策判断・決定・遂行の責任の追及を−

 

 2月、東日本大震災被災地の宮城県亘理町の「公共ゾーン仮設住宅」でアンケート調査を行いました。

被災者が「不安を感じていること」のトップが、住宅のことで93.2%もありました。16年前の1996年1月の阪神・淡路大震災の被災地においても同様でした。仮設住宅の早期解消⇒終の棲家としての復興公営住宅への移行、そのような状況の中で、民間住宅の「借り上げ」で公営住宅の供給が可能となり、兵庫県も神戸市もこの「借り上げ」方式を導入し、神戸市幹部は「あとは悪いようにはしない」「『借り上げ』方式は、画期的」と公言していたのです。20年という期限は、その時の法律上の制約があったまでで、その後、法改正も行われ、法制度上の制約はなくなっているのです。

 当時、兵庫県の住宅建設課長で現・伊丹市長の藤原保幸氏は、今年の1月、次のように発言しています(「朝日新聞」2012年1月15日付)。

 「転居問題の元には、?『県と神戸市のせめぎあい』、?『将来的な負担を避けたいと考える財政部局の意向』があった・・・。当時県は、財政力のある神戸市内には県営住宅を建てないというのが原則だった。しかし神戸市は、建て替え費用など将来の負担増を懸念。大量の市営住宅供給に慎重になっていた」。兵庫県と神戸市のどちらの財政部局も「将来的な財政負担を懸念」して「借り上げ」方式の復興公営住宅を供給したのですから、その責任は、兵庫県と神戸市の政策決定権者とその政策に賛成した県会議員と市会議員のみなさん方にあります。いま、その責任を果たそうとせず、「20年の期限があるから」と、専ら入居者に住み替えの義務があるかのように描き、追い出し策を実行してきていますが、これは、政策を判断し、決定し、そして遂行してきた神戸市当局と神戸市会の責任と義務を放棄し、すり替えていると言わざるを得ません。

 

2.この間の経緯と現状

この間、2010年10月20日(水)、神戸市会都市消防委員会において震災研究センター提出の「借上公営住宅」問題の陳情は「審査打ち切り」となりました。

 各会派の意見表明は、次の通りでした(表明順)。

 ●民主:陳述者の心情はわかるが、「打ち切り」。

 ●公明:当局がアンケートを実施し、きめ細かくすると言ってるので、「打ち切り」。

 ●自民:陳情の趣旨はわかるが、「打ち切り」。

 ●共産:20年の借上期間の延長、オーナーとの協議などすべき。「採択」。

 ●たちあがれ:当局が努力をするということを了解する。「打ち切り」。

そして、神戸市会から送られてきた「通知」文書には理由として、「借上住宅の住み替えに当たっては、今後、入居者に対して、説明会やアンケート調査を実施した上で、個別の希望や事情に配慮し、きめ細やかな対応に努めるとの姿勢が市当局より示されたため」(神戸市会議長 荻阪伸秀「陳情の審査結果について」(通知)、平成22年10月29日付)とありました。

 

その後、2011年2月に再度提出した震災研究センターの「陳情書」に関する各会派の予算特別委員会での質疑(3月4日)・意見表明(3月9日)では採択を主張した日本共産党新社会党住民投票☆市民力の3会派のほか、公明党自民党民主党もそれぞれ次のような意見を表明しました。

●公明:20年の期限については、原則止むを得ないが、「買い取り・延長も検討すること」を市長への要望書に入れました。

●自民:「矢田市長は、民主党単独推薦の市長だから、民主党ががんばる必要がある。そして、ひとり神戸市だけが、冷たいと言われないようにしていただきたい」とした上で「期限の延長に向けて早期に国と協議をすること。また、困難な入居者には、個別の対応を」を骨子とする要望書を市長に提出しました。
●民主:入居者の心情は、理解できます。個々の入居者の状況に配慮をしていただきたい。

 「借上公営住宅」の機械的住み替え策の問題点の理解が広まり、一昨年10月に比べ神戸市会の空気は一変していました。ところが、神戸市ではこの1年間、機械的住み替え策を当初の考え通り実行してきており、神戸市会での各会派の意見がどこで反映しているのかがわかりません。

 入居者への説明会も一昨年11月から始まり、その後4回実施され一巡しました。入居者の不安は、以下のように神戸市が実施したアンケート結果の中からも明らかです(神戸市都市計画総局住宅部住宅整備課「借上市営住宅の住み替え等に関する意向調査の結果について」平成23年5月11日)。

 ・かかりつけの病院から遠くなると困るので、近くの市営住宅を希望します。

 ・高齢、病気、歩行困難のため、引越しは無理です。

 ・当時、住み慣れた近くで市営住宅を応募したが落選したので、今度こそは戻りたい。

 ・年金生活なので、家賃が気になります。

 ・年齢的にも、できるだけ元気なうちに早く住み替えたい。

 ・今のままの状態で住み続けられるように、期限の延長をお願いします。

・どんな些細なことでもいいので、できる限りていねいな情報提供をお願いします。

 

3.議会は何をしなければならないか

  阪神・淡路大震災は、あの日から6258日経ちます。震災研究センターにもこの間、39人の入居者の方から相談がありました。何れも、不安で仕方がないが、どうしたらいいだろうかという切実な思いに満ちたものばかりです。

そこで、この時点で、いったん立ち止まってこの間の状況を検証していただく必要が生じたと考えるにいたりましたので、「借上公営住宅」の住み替え策に関して、地方自治法第109条に基づき、早期に「公聴会」を開き、同住宅入居者・支援者・学識経験者等から意見を聴いて、協議をして下さい。

 

 以上で、口頭陳述を終わります。 


【連絡先】
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ファクス:078-371-5985
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