兵庫県震災復興研究センター

阪神・淡路大震災の直後の大混乱の中で、いち早く被災者の暮らしの復旧、被災地の復興を目標として、日本科学者会議兵庫支部と兵庫県労働運動総合研究所が共同で個人補償の実施を中心内容とした「震災復興のための提言」を1月 29日に国と被災自治体に提出しました。そして、この2つの研究機関を母体に1995年4月22日、兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)が設立されました。

神戸市営住宅家賃制度改変についての「陳情」「請願」の提出について(報告とお願い)

神戸市営住宅家賃制度改変についての「陳情」「請願」の提出について(報告とお願い)

 

1.神戸市営住宅家賃制度改変問題で本日(11日)午後4時、神戸市会に「陳情書」(下記に全文掲載)、神戸市長宛に同趣旨の「請願書」を提出しました。黒田達雄氏(一級建築士)は、当局の計算式を駆使して試算の一覧表を添付して「陳情書」「請願書」を提出されました。
 サンテレビが提出時に取材、午後5時過ぎの「ニュースシグナル」にて報道しました。
 

2.提出後、午後4時半から神戸市政記者室にて記者発表をしました。10人ほどの記者のみなさん方に趣旨を説明するとともに、併せて、今回の改変内容の報道を積極的にされたい旨の要請もしました。

 

3.本メールをご覧いただいておりますみなさま方に下記のお願いです。
 

神戸市会の「陳情」は、13日(金)締切です。まだ、間に合いますので「陳情書」を提出して下さい。神戸市役所25階の神戸市会事務局に印鑑ご持参でお願いします。
 

神戸市長宛に「請願書」を提出して下さい。神戸市役所16階広聴課(担当:横田昌弘 係長)。提出期限はありません。
 

神戸市会都市消防委員会を傍聴して下さい。6月18日(水)午前10時〜、神戸市役所27階第3委員会室。午前9時〜受付です。
 「陳情書」を提出しました私や黒田氏が5分の口頭陳述をします。

 

4.言葉の整理をするかのように見せかけて、結局は家賃値上げになるような制度改変で、後期高齢者医療制度のスタートや諸物価の相次ぐ値上げの上、家賃値上げで生活困窮に一層拍車をかける内容になっています。

 

5.今回の事態は、まだほとんど知られていません。当方からのメールで引き続きご連絡するようにしますので、各方面に転送していただければ幸いです。

 

以 上

【事務局】   
兵庫県震災復興研究センター■ 
電 話 078-371-4593
ファクス  078-371-5985     
Eメール  td02-hrq@kh.rim.or.jp
ホームページ http://www.shinsaiken.jp/

 

 

 


神戸市会議長 植中  進様
                         2008年6月11日

「神戸市営住宅条例施行規則」の一部改正に対する陳情書

 650-0027


                    神戸市中央区中町通3-1-16、サンビル201号
                    TEL 078-371-4593/FAX 078-371-5985

     Eメール td02-hrq@kh.rim.or.jp

     兵庫県震災復興研究センター

     出 口 俊 一(事務局長)

【陳情趣旨】

1.適正手続を欠く制度改変

神戸市は4月24日〜5月23日、「神戸市営住宅条例施行規則」の一部改正(家賃制度)についての意見公募を実施した。2007年2月に「神戸市すまい審議会」の答申が出されて1年2か月の検討期間を経て、制度改変が行われようとしているが、その全体像を把握するに足る情報が示されず、5月23日の意見公募の締切まで検討時間がなく、意見をまとめようにもまとめることができない状況に置かれて、この公募は締め切られた。「これでは、闇討ちではないか」との意見も出された。

 今回の意見公募にあたっては、神戸市の説明が不十分で説明責任が果たされておらず、適正な手続がなされたとは言い難いものである。

 

2.改正案は、とんでもない家賃値上げ案―「すまい審議会」答申も棚上げ―

神戸市住宅管理課の5月14日の説明で明らかになったことは、�現在、7割減免適用の1万2684世帯が、半分の6000世帯になること�現在の家賃9500円(1人世帯、年金113万円、7割減免適用世帯)が、3倍の3万円になる世帯が出現することなどである。年金月額10万円弱の高齢世帯の入居者に3倍もの家賃負担を強いることが、「公平性の確保」「困窮概念の明確化」(「すまい審議会」答申)などの言葉で導入されるとしたら、その言葉と改正しようとする制度の間に大きな乖離が生じる。大幅な家賃値上げとなるのである。制度改変の設計結果がどのような結果をもたらすかの試算を十分にしたとは考えられない。

 また、「すまい審議会」答申には今回のような具体的な改変内容は一切触れられていない。「『答申』を踏まえた」と住宅管理課は主張するが、その主張には無理がある。「すまい審議会」の1年半ほどの審議をつぶさに傍聴し、議事録を読んだ者の一人として、あの審議会での議論と市民の意見陳述、そして答申は何であったのかという疑問が生じる。

 さて、限られた公表資料を基にしても、以下のようなことが指摘できる。

� 今回の改正案は、従来の総収入ランクによる家賃算定方法に対して、世帯構成を考慮

した支出額を基準とした点は、より公平的と言える。

� 若夫婦で小学生以上がいる世帯は、総じて減免率がアップし、家賃減となる。

� 高齢年金生活世帯は(2人世帯)、60〜69歳かつ総収入112万円以下に限って現状維持となる。

� しかし、分母である支出基準額が、低過ぎる生活保護基準額の1.2倍では実態に合

わず、低額となり、減免率がほぼ一律に低下する。しかも、減免率70%になるには、

生活保護基準の6割以下の総収入世帯に限られ、現実的ではない。

� 70歳以上になると最高7割近い値上げとなる。また、110万〜206万円では家

賃は2倍前後に、206万〜230万円なら減免率0〜10%で3〜4割強の値上げ

となる。

 

3.家賃値上げを招く制度改変は、家賃滞納者を激増

家賃減免制度については、現行では応能応益家賃制度の延長として機能しているが、本来は、急に収入が減少した場合の緊急避難措置として臨時的・補完的なものとするべきだとしている。

これは、言葉の整理として、一見正しいように思える。しかし、実際に照らしてみてどうか。家賃減免制度は法律に規定されたものであり、具体的には条例で定められた規定で、特別の事情がある場合に家賃を減免するものである。神戸市の場合は政令月収に応じて10%〜70%までの減免率を定めている。つまり、収入の低い層では一定割合の人々は家賃を減免される制度となっているのである。まさに応能応益家賃制度の延長上に位置づけているのであって、いわば、応能応益家賃制度と減免制度を包括して家賃システムとなっており、その下で家賃が支払われている。従って、このシステムを変更するには、家賃の支払い能力を踏まえて、従来通り機能するようにしなければならない。つまり、家賃減免適用を受けてきた世帯を新たに応能応益家賃制度に吸収してこれまでと変わりなく、居住できるように家賃制度を変更することが必要である。そうでなければ、言葉の整理に乗じて、家賃値上げをすることに過ぎなくなる。しかし、応能応益家賃のかなりの部分は法律で規定されているから、一自治体で変更することには無理がある。

こう考えると、法律で認められている減免制度を活用して家賃を全体として低く抑えている現行制度はそれなりに根拠のあるものであって、言葉の整理をするかのように見せかけて、結局は家賃値上げになるような制度いじりは避けなければならない。不当に減免を受けているものがあるならば、正すべきであるが、現実には安いと言われる公営住宅の家賃さえ払えず、滞納者は多い。今回の制度改変は、滞納者を激増させる恐れが予測される。

 

4.拙速な制度改変は、いったん立ち止まって再検討を

神戸市は、今回の改変で量的にどのような変化が生じるかなどの肝心の資料を示しておらず、説明責任を果たしていないのであるから、いったん踏み止まる必要がある。拙速な制度改変を強行して後日、「血も涙もない制度改変」と指摘されることのないように、改正に至る手続と内容の両面の再検討が必要である。

 そこで、以上の理由から、下記のことを陳情する。

 

−記−

 

【陳情項目】

1.後期高齢者医療制度のスタートや諸物価の相次ぐ値上げの上、家賃値上げで生活困窮に拍車をかけることは絶対に避けなければならない。今回の改正案でいくと、「困窮概念の明確化」のもとに新たな「生活困窮」を生み出すことになる。従って、支出基準額算定の根拠である生活保護基準の1.2倍という係数に固定するのではなく、総収入額に応じて、1.5、1.7、2.0などの係数を適用することによって、つまり、高齢者の生活実態に配慮して激変緩和を図ること。

 

2.「政令改正に伴う5年間の経過措置」に止まらず、神戸市独自の上乗せ分を設けること。

 


以 上