兵庫県震災復興研究センター

阪神・淡路大震災の直後の大混乱の中で、いち早く被災者の暮らしの復旧、被災地の復興を目標として、日本科学者会議兵庫支部と兵庫県労働運動総合研究所が共同で個人補償の実施を中心内容とした「震災復興のための提言」を1月 29日に国と被災自治体に提出しました。そして、この2つの研究機関を母体に1995年4月22日、兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)が設立されました。

阪神・淡路大震災15年にあたって

阪神・淡路大震災15年にあたって

     −15年の活動と『大震災15年と復興システムの転換』出版の意義

             兵庫県震災復興研究センター           

 

          兵庫県震災復興研究センターの15年 

1995年1月17日の被災直後から、被災者・市民の視点で調査・研究し、政策提言を行ってきた兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)は、15年間にその研究成果を10冊以上の著書にまとめるとともに、様々なメディアを通して国内外に発信してきた。

 活動の概要は、以下の通り。

1.著書の出版   【発行年月日】    【著作の表題・ページ数、論点、発行所】
◎1995年 3月17日  みんなできりひらこう震災復興(136ページ)
              大震災1か月後の現状と個人補償の提起
              兵庫県労働運動総合研究所
◎1995年 6月17日  震災復興への道(52ページ)
              大震災4か月後の現状と「都市は住民自身のもの」
              兵庫県震災復興研究センター
◎1996年 5月17日  生活再建への課題(212ページ)
              大震災1年の検証
              兵庫県震災復興研究センター
◎1996年10月17日  大震災と人間復興(272ページ)
              「経済大国」の内実を問う、被災地・兵庫からのメッセージ、
              生活再建への道程と「人間復興」の提示
              青木書店
◎2000年 5月17日  大震災いまだ終わらず(510ページ)
              大震災5年の検証
              兵庫県震災復興研究センター
◎2002年10月17日  大震災100の教訓(254ページ)
              復興いまだならず、100の課題提示
              クリエイツかもがわ
◎2005年 1月17日  英語版・大震災100の教訓(152ページ)
              海外に向けて大震災の教訓を発信
              クリエイツかもがわ
◎2005年 1月17日  大震災10年と災害列島(304ページ)
              創造的復興批判クリエイツかもがわ
◎2007年 1月17日  災害復興ガイド(180ページ)
              阪神・淡路大震災の相対化、「復興災害」の提起
              クリエイツかもがわ
◎2009年 1月17日  世界と日本の災害復興ガイド(200ページ)
              被災者生活再建支援法抜本改正、復興制度の必要性提起
              クリエイツかもがわ

2.政策提言

◎1995年1月〜現在:30本以上の政策提言を国・自治体などに提言.</p><h3>3.研究会・シンポジウムなどの開催

◎1995年2月〜現在:80回近く開催.

4.機関誌の発行

◎1995年5月〜現在:機関誌『震災研究センター』(現在、128号)を発行.

『大震災15年と復興システムの転換』出版の意義

 以上の成果に立って、大震災15年の復興過程を検証し、残された未復興の課題解決をめざすとともに、改めて教訓を整理し、今後の災害復興の備えの提言をまとめるため、2009年6月から検討を重ねてきた。そして、以下の内容の著書を3月上旬に出版する予定である。また、3月21日(日)午後、神戸市内で出版記念シンポジウムを予定している。15年の復興検証作業は今後、災害復興制度を確立していくための理論的・政策的基礎を提供するものでもある。

 今回の出版のねらいと留意点《ねらい》

1.阪神・淡路大震災(大震災)の復興の全体的な総括検証を行う。

2.2005年以降の復興過程の検証を行う。

3.今後の災害復興への備え(教訓)の提言を行う。また、新しい情勢のもとで、減災・復興に備えるべき点を打ち出す。問題意識は、下記の通り。

少子・高齢化、世界経済の行き詰まり、地球環境問題の切迫など。

この間の貧困化、都市の脆弱性の深まり。

 

政権交代による新たな可能性。

これまでとは異なり、真っ当な減災対策、復興対策を行う可能性がある。この状況に対して、きちんとした政策提言をしておくことが必要。

《留意点》

1.論文調ではなく、予備知識がない読者でもわかる内容にする。

2.文章は短く、簡潔なものにする。

3.各項目は読みきりで、そこだけ読んでも面白く、わかりやすく読みやすい本にする。

4.全体で110ページ程度。1000円〜1200円の買いやすい本にする。

 

2.目次

まえがき

塩崎 賢明

1.総論

(1)「創造的復興」の15年  塩崎 賢明

(2)災害復興システムの転換  池田 清

>2.「阪神・淡路大震災復興事業」とは何だったのか

―復興事業会計の検証―  増田 紘

3.いまなお復興災害 ―「創造的復興」のもたらしたもの−

(1)神戸空港の破綻  高田 富三

(2)新長田再開発事業  塩崎 賢明

(3)震災障害者  岩崎 信彦

(4)震災アスベスト被害の潜む危険  森 裕之

(5)災害弱者のその後  金持 伸子

〈コラム〉震災復興と政治  出口 俊一

〈コラム〉兵庫県西、北部豪雨被害  田結庄良昭

4.復旧・復興への提言

(1)避難所はどうあるべきか  黒田 達雄

(2)災害救助法の徹底活用を  永井 幸寿

(3)被害認定と支援策  津久井 進

(4)外国人・災害弱者への支援  金持 伸子

(5)公費解体と応急修理  黒田 達雄

(6)災害廃棄物への備え  西川 榮一

(7)災害ボランティア  村井 雅清

(8)企業の事業継続・営業再建支援  紅谷 昇平

(9)復興基金のあり方  出口 俊一

(10)義捐金のあり方  出口 俊一

(11)応急仮設住宅はどうつくるべきか  黒田 達雄

(12)仮設市街地の構想  濱田甚三郎

(13)復興公営住宅はどうつくるべきか  塩崎 賢明

(14)マンション再建への備え  竹山 清明

(15)被災者を救う復興まちづくり制度  塩崎 賢明

(16)中山間地域の持続的復興  澤田 雅浩

(17)自治体における被災者支援体制  谷口 寛

(18)被災者生活再建支援法の三度目の改正の課題  出口 俊一

(19)災害復興制度の提言  津久井 進

あとがき

西川 榮一

3.執筆者一覧(50音順)

池田  清(神戸松蔭女子学院大学教授)

岩崎 信彦(神戸大学名誉教授)

金持 伸子(日本福祉大学名誉教授)

黒田 達雄(一級建築士・新建築家技術者集団全国幹事)

澤田 雅浩(長岡造形大学准教授)

塩崎 賢明(神戸大学大学院工学研究科教授)

田結庄良昭(神戸大学名誉教授)

高田 富三(行政書士・神戸再生フォーラム事務局長)

竹山 清明京都橘大学現代ビジネス学部教授)

谷口  寛(石川県輪島市総務部長)

津久井 進(兵庫県弁護士会災害復興等支援委員会委員長)

出口 俊一(兵庫県震災復興研究センター事務局長)

永井 幸寿(日本弁護士連合会災害復興支援委員会委員長)

西川 榮一(神戸商船大学名誉教授)

濱田甚三郎(首都圏総合計画研究所代表取締役

紅谷 昇平(人と防災未来センター主任研究員)

増田  紘(兵庫県自治体問題研究所事務局長)

村井 雅清(被災地NGO恊働センター代表)

森  裕之(立命館大学政策科学部教授)

                                以上