兵庫県震災復興研究センター

阪神・淡路大震災の直後の大混乱の中で、いち早く被災者の暮らしの復旧、被災地の復興を目標として、日本科学者会議兵庫支部と兵庫県労働運動総合研究所が共同で個人補償の実施を中心内容とした「震災復興のための提言」を1月 29日に国と被災自治体に提出しました。そして、この2つの研究機関を母体に1995年4月22日、兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)が設立されました。

3・4「借上公営住宅」問題での神戸市会/予算特別委員会での口頭陳述とその審査について

 3月4日(金)午前10時から神戸市会/予算特別委員会が開かれ、2月10日(木)に提出していました「借上
公営住宅」問題の陳情書に基づく口頭陳述(下記に掲載)を行いました。

 1件の請願(住宅リフォーム)と5件の陳情(借上・2件、新長田再開発・2件、住宅リフォーム1件)が出されており、
6人の口頭陳述(5分/人)の後、午前11時から午後5時まで5時間にわたって請願・陳情に関する当局の見解表
明と6会派の議員と当局の質疑が行われました。
 委員会の様子は、昨年10月提出時と比べ様変わりをしていました。6会派の内、5会派が「借上公営住宅」問題を取り上げ、当局の見解を質していました。各会派の質疑は、次の議員が行いました。
 向井道尋(公明)、南原富夫(共産)、大野一(自民党神戸)、川原田弘子(民主)、安達和彦(自民)、粟原富夫(新社会)。大野一氏以外の議員が取り上げましたが、公明と自民は、矢田立郎市長に「借上公営住宅」問題
で要望書を提出したことも披露していました。
 公明(向井)は、「20年の期限については、原則止むを得ないが、買い取り・延長も検討すること」を要望書の3
番目に入れました。また、自民(安達)は「矢田市長は、民主単独推薦の市長だから、民主党ががんばる必要がある。そして、ひとり神戸市だけが、冷たいと言われないようにしていただきたい」とした上で「期限の延長に向けて早期に国と協議をすること。また、困難な入居者には、個別の対応を」を骨子とする要望書を提出しました。また、
民主(川原田)は、「入居者の心情は、理解できる。個々の入居者の状況に配慮を」と発言しました。

意見決定は、3月10日(木)です。神戸市会/予算特別委員会の今後の日程は、次の通りです。 
  ◆総括質疑:3月 8日(火) 午前10時〜 第4委員会室(傍聴定員40名)
  ◆意見表明:3月 9日(水) 午前11時〜 第4委員会室(傍聴定員40名)
  ◆意見決定:3月10日(木) 午前11時〜 第4委員会室(傍聴定員40名)

  引き続き、傍聴をお願い致します。特に3月9日(水)の各会派の意見表明を見届けることが大事ではないかと
思われます。

 なお、4日の神戸市会/予算特別委員会の参加者は、市会議員−23人、都市計画総局−36人、市会事務局−4人、マスコミ−1人、傍聴者−41人(午前)、22人(午後)でした。
 
 このメールの転送・転載を歓迎しますので、よろしくお願い致します。

「借り上げ公営住宅」陳述書(2011年2月10日)(Word)

 

 


神戸市会/予算特別委員会での口頭陳述(2011年3月4日)
「借上公営住宅」の機械的住み替え策は、入居者に不安を与え、問題が噴出しており、入居者の意向尊重を基本にした政策に転換することを求める陳情書」について

 神戸市中央区中町通3−1−16−201、兵庫県震災復興研究センターの出口俊一です。今後、実行されようとしています「借上公営住宅」の機械的住み替え策について、三つの角度から意見を申し上げます。

1.現状−極めて高い高齢化率と高齢者に不安を醸成−
 昨年10月20日、神戸市会に提出しました陳情書に関する結果は、「きめ細やかな対応に努めるとの姿勢が市当局より示されたため」(神戸市会議長 荻阪伸秀「陳情の審査結果について」(通知)、平成22年10月29日付)「審査打ち切り」となりました。
 その後、4か月余りの中で、800戸余りの住宅を対象に神戸市は意向調査や説明会を実施してきましたが、入居者には大きな不安を与え、見過ごすことのできない事態が生じています。神戸市会議員のみなさん方が、不安を抱える入居者の“防波堤”になっていただくことを強く要請致します。
 入居者5172人の内、65歳以上は2909人で56.2%という極めて高い高齢化率を示しています。今年に入って2か月の間に、33人の入居者の方から相談がありました。すべての方に共通していますのは「驚き、嘆き、怒り、そしてこれから先の不安」です。転居を望まない高齢者を移転させれば、孤独死など新たな問題を引き起こしかねません。機械的住み替え策を「きめ細かく」推進すればするほど、入居�者に不安を与えています。間違ったことを「きめ細かく」実行すればするほど、間違いは増幅しているのです。

2.道理に合わない神戸市の言い分
(1)神戸市と事業者の契約
  矢田立郎市長は、「借り上げ復興住宅は、・・・返還の契約を守るべきだ」(「産経新聞」2010年11月30日付)「契約がある以上、返還するのが前提だ」(「神戸新聞」2011年1月14日付)との見解を表明しています。
  契約の内容を守ることは当然のことですが、いったん契約を交わしたら、その内容は不変なのでしょうか。契約の
当事者双方が合意をすれば変更可能なのが契約というものです。神戸市が交わしている契約書には「借上期間終了後の取扱い」が明記されています。「20年の期限」は契約していますが、それが絶対ではありません。当事者間で
協議すればいいことです。ある「神戸市住まい審議会」の委員は、「契約の内容は知らなかった」と述べています。契
約に基づけば、「20年の期限」を延長するとか、「借上公営住宅」の買い取りなども検討することが可能です。

(2)民間家主(オーナー)の意向
  神戸市が2007年(平成19)6月に実施していた民間家主(オーナー)へのアンケート調査結果では、全オーナー86人の内83人(96.2%)のオーナーが、契約の継続を求めています。矢田市長は「返還するのが前提だ」と主張しますが、契約の相手方である民間家主の意向を踏まえているのでしょうか。

(3)神戸市と入居者
神戸市と入居者との契約にあたる「神戸市営住宅入居許可書」は、3種類あります。その内、最初の数年間使
用していた「許可書」には、「借上期間」が明示されていません。従って、この「許可書」で入居している方は、他の公営住宅入居者と同様、期限がないということです。
期限の明示がない「許可書」は、432戸(11.3%)もあります。少なくとも、この432戸は、「契約を重んじる」神戸市の言う3805戸の「借上公営住宅」から除く必要があります。「募集要項で期限を明示し、昨年から始めた住民への説明会などでも期限について伝えており問題ない」(「毎日」2011年2月11日付)との見解を神戸市住宅整備課は公言していますが、どのように繕おうとこの432戸の「許可書」には期限がなく、つまりミスがあり、除外する以外にはありません。

3. 機械的住み替え策を見直して、居住権の保障を
  2010年12月22日(水)、宝塚市中川智子市長が、同12月28日(火)には兵庫県井戸敏三知事が、
借上住宅の買い取り検討を相次いで表明しました。井戸知事は2011年1月7日(金)の定例記者会見でも重ね
て買い取りの検討を表明しました。宝塚の中川市長は、「金銭面で入居者の不安は高まっている。市の方針を早めに伝えて安心させたいと考えた」(「神戸新聞」2010年12月23日付)と記者会見で述べています。
 矢田市長は「・・・スムーズに移転できるよう意向調査し、希望がかなう努力をする。介護が必要な高齢者だと、移転先を探すより、老健施設に入っていただいた方がいいケースもありえる」(「神戸新聞」2011年1月14日付)と、
震災16年インタビューに答えていますが、大震災の教訓はどこにいってしまったのか、と目を疑うような内容です。
 兵庫県が実施した「意向確認調査」では、住民5割が「住み替え困難」と答えています(「神戸新聞」2010年12月22日付)。神戸市の政策をいまのまま実行すれば、「住み替え」困難な入居者を無理矢理移転させることになります。矢田市長の言う「スムーズに移転」などができないのは、明らかです。
「借上方式」を導入した1996年(平成8)当時は、民法第604条1項を適用して「20年の期限」を設定したのですが、その後1999年(平成11)、借地借家法が改正されて、その第 29条2項に「民法604条の規定は、建物の賃貸借については適用しない」との文言が追加されました。従って現在、「20年の期限」はなくなっているのです。

国土交通省総合住宅整備課の担当者は2010年12月9日(木)、私どもの問い合わせに対して「借地借家法も改正されており、新たな契約を交わしていただいたら継続入居は可能です」との回答をしました。
期限延長・契約更新は、法制度上も契約上も可能です。また、民間オーナーの圧倒的多数は、期限延長を求めています。矢田市長が公言している内容は、法律改正の経緯を踏まえたものとは言い難いものです。

陳情事項は、以下の2項目です。
1.「借上公営住宅」の機械的住み替え策は、入居者に不安を与え、問題が噴出しており、入居者の意向尊重を
基本にした政策に転換すること。具体的には、説明会などいま実施している作業をいったん中止した上で入居者
に意向調査を実施し、その結果を尊重すること。

2.期限の明示がない「借上公営住宅」(432戸)は、全管理戸数3805戸から除くこと。

以上で、口頭陳述を終わります。