兵庫県震災復興研究センター

阪神・淡路大震災の直後の大混乱の中で、いち早く被災者の暮らしの復旧、被災地の復興を目標として、日本科学者会議兵庫支部と兵庫県労働運動総合研究所が共同で個人補償の実施を中心内容とした「震災復興のための提言」を1月 29日に国と被災自治体に提出しました。そして、この2つの研究機関を母体に1995年4月22日、兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)が設立されました。

「借上住宅」(復興公営住宅)問題での神戸市会/都市消防委員会での口頭陳述とその結果について

 本日午前10時から神戸市会/都市消防委員会が開かれ、先に提出していました「借上住宅」問題の陳情書に基づく口頭陳述(下記に掲載)を行いました。
 午後3時前、各会派の意見表明の後、「採否を決しないで、打ち切りとする」という、「採択」「不採択」何れでもない結果となりました。神戸市会事務局にこのことを確かめますと、「不採択にはできない時、第3の『打ち切り』が選択
されます」。「今後、繰り返し陳情は可能ですね」と問いますと、「それは、可能です」との答弁でした。

 従来の経験からは「不採択」が予想されましたが、その「不採択」ではなく、「打ち切り」というどちらでもない結果を選択せざるを得なかった点に、神戸市当局やその当局を擁護する会派の受け身の姿勢が見られました。「採択」を主張した共産党以外の意見表明の理由と結論の乖離、当局の答弁も結論だけあって、説明がなされなかったことなどから受け身になっていることが窺えました。

 各会派の意見表明は、次の通りです(表明順)。
 ●民主:陳述者の心情はわかるが、「打ち切り」。
 ●公明:当局がアンケートを実施し、きめ細かくすると言ってるので、「打ち切り」。
 ●自民:陳情の趣旨はわかるが、「打ち切り」。
 ●共産:20年の借上期間の延長、オーナーとの協議などすべき。「採択」。
 ●たちあがれ:当局が努力をするということを了解する。「打ち切り」。

 なお、当局(都市計画総局住宅部長)の答弁は、私の口頭陳述に論拠を示さず反論するかたちで行われました。
次の通りです。
 今回の「借上住宅」の住み替えは、「第2次市営住宅マネジメント計画」の「3項目の基本方針」に基づいている。
 〔基本方針1〕「できるだけ長く使う」。
 〔基本方針2〕管理戸数については、将来を見据え、円滑な縮減を図る。
 〔基本方針3〕マネジメント計画を通じた健全会計の確保を図る。
 今回の計画は、住生活基本法の趣旨に副っている。手続きは適正。そして、所有者にも2回説明した。入居者に不安を与えないよう丁寧に説明していく。国の「ガイドライン」(案)に反するものではない。

 本日の神戸市会/都市消防委員会の参加者は、のべ130人近くにのぼりました。内訳は、市会議員−10人、都市計画総局−38人、消防局−38人、市会事務局−2人、マスコミ−7人、傍聴者−約30人です。
 
 このメールの転送・転載を歓迎しますので、よろしくお願い致します。

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神戸市会/都市消防委員会での口頭陳述

「『借上住宅』(復興公営住宅)の住み替え策は、手続面でも内容面でも問題があり、改めて入居者の意向を尊重するように再検討することを求める陳情書」について

 神戸市中央区中町通3−1−16−20、兵庫県震災復興研究センターの出口俊一です。

 「借上住宅」(復興公営住宅)の住み替え策について、意見を申し上げます。
 本日(10月20日)、あの阪神・淡路大震災から5755日が経とうとしています。大震災から5700日以上も経って、被災者の“終の棲家“となっている「復興公営住宅」の住み替え策がいきなり神戸市から出されていることについて、とても残念な気がします。

 さて、昨夜(10月19日)、24世帯の民間の「借上住宅」で世話をされておられる入居者のYさん(85歳)のお話を伺いました。
 入居者のみなさん方のご意見を紹介していただきました。
 ○神戸市のパンフレットが配られた9月から動揺が広がり、不安が生じてきた。
 ○死ぬまでここにおれると思った。
 ○83歳にもなって、引っ越しは無理だ。このままここにいたい。
 ○80以上になって、遠くに行けということは「早く死ね」ということではないか。
 ○(途中入居の人は)「20年」という期限を聞いていない。
 ○10年かかって、ようやく住民同士の絆ができてきた。
 そしてYさんは、次のように話されました。
 神戸市からは一片の紙だけが送られてきた。そんな一片の紙で、築いてきた絆が断ち切られようとしていることは、大変なことだ。コミュニティが神戸市の手によって壊されようとしている。1997年7月末にポートアイランド第6仮設住宅で起きた神戸市による給水停止による孤独死事件を想い起こさせる。今後、自分たちの意見を神戸市に伝えるようにしていきたいと考えている。

 神戸市は、入居者の意向を全く聞かずに、去る8月中旬から「20年の期限がきたら住み替えを」といきなりパンフレットを配布したわけですが、これは順番が違っています。兵庫県は先日、県の「借上住宅」の入居者の方にアンケート調査を実施しました。アンケートの内容はあまり感心しませんが、まずは入居者の方の意向を聞いた上で、今年度中に方針を決めるとしています。

 また、昨年5月に出された国土交通省の「既存民間住宅を活用した借上公営住宅の供給の促進に関するガイドライン(案)」(平成21年5月、国土交通省住宅局住宅総合整備課)の中では「期間満了に伴う必要な措置」(P.20)について次のように記されています。

 「地方公共団体は、事業者との事前協議により、�契約の終了について確認した場合には、入居者に対し、期間満了後において他の公営住宅への入居を希望するか否かについて、意向調査を行う」

 10月4日(月)、私は国土交通省総合住宅整備課に確かめたところ、次のようなコメントでした。
 「この文書はいまだ(案)ではありますが昨年、全国の都道府県・市町村に提示しています。もちろん神戸市も知っていただいています。各自治体は自治体の方針があると思いますが、手続きは、ガイドライン(案)にそってほしいと考えています。神戸市の『借上住宅』のことについては、認識しています」。

 次に、「20年の期限」ということについても、例えばURとの契約第4条には「借上期間終了後の取扱い」が明記されています。
 「借上住宅入居者が借上満了日若しくは用途廃止日以降も継続して居住することを希望し、かつ、甲(UR)が定める入居資格を有するときは、甲(UR)は、当該者との間で甲(UR)の定める賃貸借契約を締結する」。
 「20年の期限」だけではありません。「期限延長」も可能です。

 今回、神戸市の「第2次市営住宅マネジメント計画」策定にあたっては、4つの法律−住生活基本法(2006年6月制定)、住宅セーフティネット法、公営住宅法、耐震改修促進法−に基づくものであるとしていますが、その中の「住生活基本法」第6条では「居住の安定の確保」が基本と明記されています。

  第6条 住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策の推進は、住宅が国民の健康で文化的な生活に
   とって不可欠な基盤であることにかんがみ、低額所得者、被災者、高齢者、子どもを育 成する家庭その他住
   宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が図られることを旨として、行われなければならない。

 いま、実行されています「住み替え策」の提示は、「居住の安定の確保」とは反対に、入居者に不安を掻き立てるようなことになっています。折角、4年前に制定された「住生活基本法」の理念は完全に無視されています。「住生活基本法」第6条に違反する状態が作り出されています。

 以上のように「借上住宅」(復興公営住宅)の住み替え策は、手続面でも内容面でも問題がありますので、改めて入居者の意向を聞き、その意向を尊重するようにしていただきたいと思います。いま107団地・3805戸の「借上住宅」の入居者の多くの方が抱いておられる計り知れない不安を取り除いて下さい。そのために、神戸市会議員のみなさん方のお力を貸して下さい。いまからでも遅くはありません。
 以上で、口頭陳述を終わります。
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【事務局】
兵庫県震災復興研究センター
650-0027
神戸市中央区中町通3-1-16 サンビル201号
TEL:078-371-4593/FAX:078-371-5985
携帯:090-5658-5242

 

 

 

2010年10月12日
神戸市会議長
 荻阪 伸秀様                          
                      陳情者
650-0027
神戸市中央区中町通3-1-16、サンビル201号
電話:078-371-4593/ファクス:078-371-5985
出口 俊一(兵庫県震災復興研究センター)
黒田 達雄(一級建築士

「借上住宅」(復興公営住宅)の住み替え策は、手続面でも
内容面でも問題があり、改めて入居者の意向を尊重するように
再検討することを求める陳情書

【陳情趣旨】 
1.「借上住宅」(復興公営住宅)入居者に、四度目の住み替え策が提示される                             
神戸市は2010年6月18日(金)に決めた「第2次市営住宅マネジメント計画」の中で、「『借上住宅』(復興公営住宅)入居者には、期限の20年がもうすぐ来るので住み替えをしてもらう」という住み替え策を提示し、8月中旬から9月にかけて対象住宅にパンフレット「第2次市営住宅マネジメント計画のお知らせ―安全・安心・安定をめざして―」を配布しました。
パンフレットを見たHAT神戸脇の浜住宅の入居者は、「来年にでも出なければならないと思った。パンフには『全ての住宅を空き家にして返還』と書いてあり、心配になってきた」と、早速不安を漏らしています。神戸市が、被災者の不安を掻き立てるようなことをしているのです。このパンフレットのサブタイトルには「安全・安心・安定をめざして―」と書かれていますが、こんな人を馬鹿にしたことはありません。どこに「安心・安定」があるのでしょうか。
「借上住宅」(107団地、3,805戸、推定人口7,200人余)は、神戸市側の都合で、所有者(事業者)から借り上げて復興公営住宅にしたものであって、被災者の多くは、“終の棲家”として入居しているのです。
5月19日(水)夜、「借上住宅」入居者の方から兵庫県震災復興研究センターの事務所に問い合わせの連絡がありました。「何年か先にいま住んでいる市営住宅を出ていかんとあかんようになるみたいですが、ほんとうですか。ほんとうだったらどうしようかしら」と。調べてみると、神戸市の「第2次市営住宅マネジメント計画(案)」の中に、「入居者の住み替えや一般募集への影響などに留意しながら所有者への返還を進めていく」(P.19)と記されていました。
そこで5月31日(月)、「借上住宅」住み替え策の再検討を求めるパブリックコメントを提出しました。結果、市民20人(63件)が提出し、それらへの神戸市の「回答」もすでにホームページにアップされていますが、「回答」は市民の意見に誠実に答えたとは言い難い代物です。 
「計画(案)」 と「計画」を読み比べてみると60箇所ほど修正されていますが、基本線は変更されず、当初の「計画(案)」の基本方針が確定されました。修正の特徴は、二つです。
表記の修正、表現の修正(前後の入れ替え)、説明の補充。
パブリックコメントの指摘により、都合の悪くなった内容(住生活基本法に関する説明)は本文から削除して用語集に移動、また、本文と用語集の両方からの削除したものまであります。
この2番目が問題です。今回の計画策定にあたって基本としている4つの法律−住生活基本法、住宅セーフティネット法、公営住宅法、耐震改修促進法−の「住生活基本法」の理念に関する不正確な記述については本文から削除して後段の用語集に少し修正を加えたことや、当初「計画(案)」に記述されていた「神戸の住宅設計基準(平成8年6月策定)に基づく」という表現が削除され、用語集からも消されていることなどです。

2.「計画」は、入居者の居住権を保障するというよりは、「戸数縮減⇒会計の健全
化」に偏重「計画」の管理戸数の数値目標は、次のようになっています。
   「市営住宅の管理戸数は震災前の約4万戸から震災後のピーク時には5万5千戸を超え」(P.1)、「平成21年度末現在で、427団地、1,270棟、53,068戸となっている」
(P.4)。「被災者世帯の減少にあわせた震災前水準への収束を意識しながら円滑な縮減を図り、当計画期間中に46,000戸程度とする」(P.20)。今後、10年間で7,000戸減らすということです。
なお、<入居者の状況>として、「平成21年度末現在で、89,272人(入居戸数46,943戸)」(P.11)との記述がありますが、管理戸数と入居戸数の差が6,000戸以上もあるというのはどういうことなのでしょうか。6,000戸以上も空き家(11.5%)にしておけば、それだけ「住宅使用料」が入ってこないことにもなります。
   また、「健全な市営住宅会計を確立」(P.1)、「会計の健全化が不可欠」(P.15)、
「健全な会計の達成」(P.18)、「会計の健全化を図っていく」(P.20)、「健全な市営住宅会計を確保していく」(P.28)と、最初から最後まで「会計の健全化」という言葉で貫かれています。「健全な会計」ということは、誰も否定できないことです。その否定できないものを錦の御旗にすることで、必要な住宅の戸数の縮減がなされ入居者の居住権が侵害されるような事態がもたらされるのなら、それは、本末転倒と言わざるを得ません。

3.「計画」は、何に基づいて作成されたのでしょうか
   「計画」は、新たな住生活基本計画に位置づけていくとして、「住生活基本法」「住宅セーフティネット法」「公営住宅法」「耐震改修促進法」の4本の法律に基づくものであるとしています(P.3)。その中の「住生活基本法」の基本理念は、以下の4点です。
   住生活の基盤となる良質な住宅の供給、建設、改良又は管理(第3条)
   良好な居住環境の形成(第4条)
   サービスの提供を受ける者の利益の擁護及び増進(第5条)
   居住の安定の確保(第6条)
   ところが「計画(案)」では、住生活基本法の紹介を「この法律では、“ストックの重視”“市場重視”の視点を基本として・・・」(P.3)と書かれていました。これらの視点は、住生活基本法が制定される1年余り前の「住宅政策改革要綱」(2004年12月)のもので、制定された住生活基本法では、“市場原理主義”から“市場制御”に軌道修正されているのです。
   続けて「計画(案)」は、「耐震性の確保やユニバーサルデザイン化の推進等により良質なストックを形成していくこと」、「公的賃貸住宅のみならず民間賃貸住宅も含めた住宅セーフティネットの機能向上を目指していくこと」が住生活基本法の目標に掲げられたと書いていましたが、このような文言は同法の条文(第1条〜第22条)には、見当たりません。「計画(案)」は、何を引用し、何に基づいて作成されたのでしょうか。「計画(案)」は、住生活基本法に基づくと言いながら、中身は同法にないものをもってきて説明しているのです。従って、その時点で審議の出発点に立ち返ることが必要だったのです。

4.「計画」の“基本方針1〜3”は、住生活基本法の基本理念を逸脱
   「計画」の「3項目の基本方針」(P.18)は、次のようになっています。
   〔基本方針1〕
     「できるだけ長く使う」ことを基本とする一方、将来を見据え、適切な質・戸数の確保、市営住宅会計の収支、コスト、まちづくりなど総合的な観点から、改修・更新時期を迎える住宅について、改修・建て替え・廃止をバランスよく行っていく。
   〔基本方針2〕
     高度成長期の大量ストックの更新時期と震災時の需要増に対応した借上住宅の返還時期を迎え、管理戸数については、将来を見据え、円滑な縮減を図る。
   〔基本方針3〕
    将来にわたって、住宅セーフティネットの中で市営住宅に求められる役割を果たしていくために、マネジメント計画を通じた健全会計の確保を図る。
   「戸数縮減⇒会計の健全化」が基調になっています。住生活基本法の基本理念は、消えてしまい同法を逸脱してしまっています。行政は、法律に基づかなければなりません。

5.神戸市と所有者との契約書に基づき再考を
   8月12日(木)、「借上住宅」の所有者(公社、UR、民間)と神戸市とのそれぞれの契約書を情報公開請求をして入手しました。
  当然のことながら、契約書には「借上期間終了後の取扱い」が明記されています。「20年の期限」は契約していますが、それが絶対ではありません。当事者間で協議すればいいことです。例えば、神戸市供給公社との契約書では第11条2項に「・・・特借賃住宅の入居者が借上満了日、又は契約解除日以降も借上住宅に継続して居住することを希望し、かつ、乙(公社)が定める入居資格を有する場合は、乙は当該入居者との間で乙の定める賃貸借契約書により賃貸借契約を締結することができる」と記されています。URや民間とも同様の内容になっています。
ところが、神戸市はそれを脇に置いて「20年の期限」のみに限定して「住み替え」を提示しています。「神戸市住まい審議会」の審議においても、また8月中旬から神戸市営住宅に配布されたパンフレット「第2次市営住宅マネジメント計画のお知らせ―安全・安心・安定をめざして―」の中にも「20年の期限」のことしか示されていません。
  契約に基づけば、「20年の期限」を延長するとか、「借上住宅」の買い取りなども検討することが可能なのです。
神戸市は「20年の期限」いう情報しか提示していません。「借上住宅」は、行政側(供給者)の都合でなされたものです。被災者が好き好んで、というよりは一日も早く仮の住まいから恒久住宅に移りたいとの思いで、「20年間」ということはわかっていても、とにかく入居したものです。当時の金芳外城雄生活再建本部長も被災者団体との間で、「とにかく入居してほしい。20年先のことは悪いようにはしない。誠実に対処していく」と表明しています。
6月24日(木)の神戸市との交渉の席上でも、北山富久住宅管理課長は「当時の金芳外城雄生活再建本部長から、そのことは聞いている」と表明。同課長と住宅整備課主幹は、「今後、個々の世帯に通知するが、あらゆる可能性を尽くす」「(被災者への不安を生じさせないようにという要望には)誠意をもって対応する」と表明しました。

6.国土交通省ガイドライン(案)に悖る手続面の瑕疵
  「既存民間住宅を活用した借上公営住宅の供給の促進に関するガイドライン(案)」(平成21年5月、国土交通省住宅局住宅総合整備課)の中では「期間満了に伴う必要な措置」(P.20)について次のように記されています。
地方公共団体は、事業者との事前協議により、契約の終了について確認した場合には、入居者に対し、期間満了後において他の公営住宅への入居を希望するか否かについて、意向調査を行う」
10月4日(月)、国土交通省総合住宅整備課に確かめたところ、次のようなコメントでした。
  「この文書はいまだ(案)ではありますが昨年、全国の都道府県・市町村に提示しています。もちろん神戸市も知っていただいています。各自治体は自治体の方針があると思いますが、手続きは、ガイドライン(案)にそってほしいと考えています。神戸市の『借上住宅』のことについては、認識しています」。
今回の神戸市の住み替え策は、いまだ事業者とも確認はしておらず、ましてや入居者には6月18日(金)に住み替え策を一方的に決めたあと、2か月後に入居者に知らせています。完全に順番が違っています。ボタンを掛け違っています。手続面の瑕疵は、否めようがありません。

7.兵庫県の「借上住宅」(復興公営住宅)問題の方針
9月17日(金)午後、兵庫県住宅管理課の担当者に「借上住宅」問題で質しました。回答は、以下の通りです。
   「借上住宅」の戸数は、UR:2330戸、公社と民間が若干数。
   「契約の20年」を守るのが原則だが、今秋、各戸にアンケートを実施する。その結果、期限を延長するか、他の県営住宅に移っていただくかを考えている。買い取りは、財政的に困難。方針は、今年度内に決める予定。神戸市が配布されたパンフレットも拝見したが、少々びっくりした。先走っているようだ。
   兵庫県が今秋、まず入居者の意向を把握するというのは、全く当然のことなのですが、なぜこうも被災地の自治体間で違いが生じるのでしょうか。

 8.入居者の声に耳を傾けて、機械的住み替え策の見直しを
   兵庫県震災復興研究センターにこの間、入居者や市民から届けられた意見は以下の通りです。

    ○避難所や仮設住宅を転々としたが、居住の権利が守られていると感じたことが少ない。
    ○10年少し暮らしてやっと地域のコミュニティができてきたのに・・・。
    ○やっと生活に慣れてきたのに・・・。年金生活で金銭的にも身体的にも引っ越しは厳しい。
    ○いつまでに転居しないといけないのか。
    ○契約延長は考えていないのか。
    ○今は公営なので家賃も安いが、返還されたら4万円ほど上がり、住み続けるのは難しいか
も。単身の高齢者が多く、同じ仮設住宅から来たという人もいた。ずっと暮らしたいと思っている人は多いのではないか。
    ○20年の期限が来るのは、あと9年も先のこと。もうこの世におらんわ・・・。市役所にものを言いたいが、そんな元気もない。むごいことするなあ。弱いもんイジメそのものや。
○今日(9月19日)のシンポジウムは、大変ためになった。震災から15年経って出てきた問題。住民の声を聞かずにまちづくりをした「復興都市計画」と同根のものを感じます。今回は、住民がいわば間借り人で、しかも個々バラバラであるだけに、市役所に対してまとまった力になりにくいという課題がある。

                                  
○とっても大問題が、とんでもないことが復興公営住宅で起きていると感じました。私のグループでも、このテーマを取り上げた勉強会をしたいです。

     
○神戸市の復興住宅の政策が間違っていた。所有者の声も聞いて、運動をしなければならないと思った。

事務所にかかってくる電話の向こうから届けられる声の切実さを、69人のすべての神戸市会議員の方々におわかりいただきたいと思います。
 
9.「住生活基本法」第6条は、「居住の安定の確保」が基本と明記
今後、この住み替え策が実行されていくことになれば、“終の棲家”として入居している多くの被災者に不安が生じることは想像に難くありません。いや、すでに不安を抱いている被災者が出始めています。「住生活基本法」第6条に明記されている「居住の安定の確保」という理念とは真逆のことが行われようとしているのです。

   第6条 住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策の推進は、住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤であることにかんがみ、低額所得者、被災者、高齢者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が図られることを旨として、行われなければならない。
                                     
このまま、住み替え策が強力に実行されていけば、大震災から16年近くも経って被災自治体・神戸市の施策によって新たに被災者に困難―大震災から四度目の住み替え―を強いることになります。これでは、大震災からの復興の過程で発生させる“復興災害”と言わざるを得ません。
被災者の居住権を保障するには、いまここでいったん立ち止まって、住み替え策の見直し・再検討を行い、入居者の意向を尊重して下さい。いまからでも、遅くはありません。

【陳情事項】 
「借上住宅」(復興公営住宅)の住み替え策は、手続面でも内容面でも問題があり、
改めて入居者の意向を聞き、その意向を尊重すること。

以 上